シンシア動物病院

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再生医療




再生医療(細胞治療)とは?

細胞は増殖しながら、筋肉や骨などそれぞれの器官の役割を身に付けていきます。
この前段階の「幹」となる細胞を「幹細胞」と呼びます。
この細胞を取り出し体外で培養し、病気や怪我の治療に役立てる治療法を再生医療(細胞治療)と言います。
人間の医療においてはすでに臨床現場で利用されている治療法で、獣医療における再生医療の取り組みも広がりつつあります。

幹細胞療法(脂肪幹細胞療法)


幹細胞療法では、皮下脂肪の中に含まれる脂肪幹細胞を使用します。
脂肪幹細胞は、骨や軟骨、筋肉や心筋細胞、そして血管を形づくる細胞に分化することが知られています。
幹細胞療法は、これらの分化する能力を利用することで、自分の細胞から必要な器官や臓器を形成させることを目的とした治療法です。

どのような病気に効果があるのか?

脊髄損傷

幹細胞が血管へ分化して、損傷部位の血流を回復することで、神経細胞の伸長を補助したり、幹細胞自体が神経へ分化することにより、脊髄全体の再形成を補助すると考えられます。

骨折・骨折癒合不全

幹細胞が骨の周囲にある骨膜(こつまく)や、骨細胞、また栄養を運ぶ血管に分化することで、骨折部位を修復します。

炎症性関節炎

関節部分の骨膜や軟骨部分が傷ついたりすると炎症を起こし、歩行が困難な関節炎になります。幹細胞を投与することで、関節に新たな軟骨や骨膜を形成させ、痛みをやわらげたり、炎症を回復させます。

当院での幹細胞治療法の流れ

当院では自家移植と他家移植による治療法があります。
 
自家移植 自分自身の幹細胞を採取して培養増殖させて体内に移植します。
 
①幹細胞の採取  骨髄もしくは皮下脂肪から幹細胞を採取します。
②培養      2週間程度かけて病院の培養設備で培養を行います。(2回目以降は1週間となります)
③点滴注入    点滴を1時間ほどかけて、ゆっくりと注入していきます。
 
②・③の過程を1週間おきに合計3回投与します。  
 
他家移植 健康なワンちゃんネコちゃん(ドナー)から幹細胞を採取して培養増殖させて体内に移植します。
 
①幹細胞の解凍  -80℃で保存している幹細胞を解凍して、個々に調整します。
②点滴注入    点滴を1時間ほどかけて、ゆっくり注入します。
 

他家移植の安全性

細胞には自己と非自己を区別する信号が出されています。
自己の細胞なら肝臓の細胞や腎臓の細胞など全く違う細胞でも自己の細胞である信号が出されています。
非自己の細胞が体内入った場合、自己と違う信号が出されていますので、免疫細胞により攻撃を受けて排除されます。
しかしながら、間葉系幹細胞ではこの信号がほとんど出されていません。
このことから他家移植をしても免疫細胞によって発見排除されにくく、拒絶反応の心配がありません。

よくあるご質問

幹細胞って? 動物の体にある細胞は、もとになる細胞からいろいろな器官や臓器を形成する細胞に変化します。
この変化を「分化」するといい、このもとになる細胞が幹細胞です。
もともと骨髄や脂肪組織に含まれる幹細胞は、筋肉、心筋、血管、骨、軟骨に分化することが知られています。
いわゆるiPS細胞やES細胞のような万能細胞とは異なり、分化する細胞が限られているのが特徴です。
幹細胞療法ってなに? 病気のイヌやネコから脂肪組織や骨髄液を少しだけとり、そこから増殖させた幹細胞を用いて、ダメージを受けた患者の細胞や組織を修復したり再生したりする治療法を指します。
その際用いる幹細胞は、血液中に投与される場合もありますし、患部に直接移植される場合もあります。
どのような病気に効果があるの? 幹細胞は、骨折癒合不全や脊髄損傷、また炎症性の関節炎で治療の研究が進められています。
骨折癒合不全では、幹細胞が骨の周囲にある骨膜(こつまく)や、骨細胞、また栄養を運ぶ血管に分化することで骨折部位を修復していくと考えられています。
また、脊髄損傷では、幹細胞が血管へと分化し、損傷部位の血流を回復することで、神経細胞の伸長を補助したり、脊髄全体の再形成を促すと考えられています。
関節炎では、幹細胞は関節に新たな軟骨や骨膜を形成させ、痛みを和らげたり、炎症を回復させると考えられています。
どうやって脂肪や骨髄をとるの? 脂肪をとるときは全身麻酔を行い、パチンコ玉程度の大きさをとります。
骨髄液をとるときは、全身麻酔を行い、少量の骨髄液を採取します。

公開日:
最終更新日:2019/11/28