シンシア動物病院

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がん免疫療法



免疫療法とは

ペットの寿命が延びるにつれ、老齢による疾患が増加してきました。中でも近年は人と同様にガンによる死亡原因が最も高くなっています。最近の統計では犬では2頭に1頭が、猫では3頭に1頭がガンによって亡くなっています。
 
ガンは遺伝子といわれる体の設計図の異常により増殖の制御ができなくなった細胞です。健康な動物でも遺伝子の異常によりガン細胞が出現しています。しかし健康な動物では免疫細胞が働いています。免疫とは「自分の体を守る働き」です。免疫細胞は常に体の中の異常を監視していて、ガン細胞が出現したとき、ガン細胞を敵とみなして攻撃しています。しかし、老齢になると免疫が徐々に弱くなり、ガン細胞の出現を押さえ込めれなくなり、ガン細胞の増殖を許してしまうようになります。
 

動物には病気や怪我に対して自分で治そうとする免疫力(白血球のリンパ球)という自然治癒力が備わっており、体内にできたがん細胞や体の中に侵入した細菌やウイルスを攻撃して死滅させます。免疫細胞療法は、このような生まれつき備わっている免疫の力を利用したり、免疫の力を強めたりすることで、がんの発症や進行を抑える治療方法です。
がんの治療には、外科手術・化学療法・放射線療法の三大療法がこれまで主流を占めてきました。これに継ぐ第4の療法として、またがん治療特有の苦痛を伴わない普通の生活を送れるようQOL(Quality of Life)の改善を期待する治療法として、免疫細胞療法は注目を集めています。

免疫療法の種類

活性化リンパ球(CAT)療法

イヌ、ネコの血液(10-12ml)からリンパ球を回収し、薬剤を加えてリンパ球の活性化・増殖を行ないます。その後、およそ1,000倍に増えたリンパ球を洗浄・回収し、点滴で体内に戻します。
樹状細胞ー活性化リンパ球(DC-CAT)療法

すりつぶしたがん細胞(腫瘍組織)を、樹状細胞と一緒に培養します。樹状細胞はリンパ球にがんを特異的に攻撃させるための目印を持つ細胞です。この樹状細胞と活性化して1,000倍に増やしたリンパ球を投与することで、よりがん細胞に対して特異的にリンパ球を攻撃させる療法です。


免疫療法の特徴とは

他の療法との相乗効果、手術後の再発予防

手術後の再発予防に効果があり、化学療法などの治療法を組み合わせることによりより良い効果が期待できます。

副作用の心配がほとんどない

副作用は軽い発熱がたまにみられる程度です。自己のリンパ球ですので、アナフィラキシーショックなどの重篤な副作用の報告はありません。

延命効果、生活の質(QOL)の改善がみられる

がんが進行すると痛みや貧血など、患者さんにとって大変つらい自覚症状が現れますが、免疫療法にはこうした苦痛をやわらげる作用があります。既存の治療法と同様に進行がんや末期がんを完全に治すことは困難ですが、がんの進行を抑え、生活の質(QOL)が改善されることで、通常の生活を送ることができるようになります。食欲がなく体重の減少が見られるような症例でも、リンパ球投与後に食欲が戻り体重が増加するような効果が期待できます。


公開日:
最終更新日:2019/11/28