シンシア動物病院

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シンシア動物病院(倉敷)ニュースレター60:ペット・フード大量リコール問題の腎不全原因解明される

      2019/07/22

以前、ニュースレターで書いたペットフードのリコール問題。当初メラミンが検出され、それが原因でペットが腎不全を起こしたのではなかろうかと言われ、リコールとなったのであるが、メラニンをペットに投与しても病気の再現性は無く、その毒性についてはハッキリしなかった。しかし、本来フードに入ってはいけない物なのでリコールを掛けたと言うわけである。その後シアヌール酸が検出されたと報告があったが、この毒性も今ひとつ決め手に欠けていた。結局、原因がハッキリせず科学者にとってはモヤモヤとしてスッキリしないリコール問題であった。ペットフードが原因であると判っていても、その中の何が悪いのか判らないと問題を解決したことにならないからである。
それが、今回やっと解ったのである。Birgit Puschnerらの実験(Jounal of Veterinary Diagnostic Investigation Vol19,Issue6)によると、メラニンとシアヌール酸それぞれ単独ではたいした毒性は無いが、両者を併せて投与するとリコール問題の発端となった腎不全を起こしたと言うのである。この病気に特徴的な黄色い結晶が、腎臓の尿細管や尿に析出して腎臓に障害を与えていたと言う。
このメラニンとシアヌール酸、実は親戚関係でメラニンを酸性下で加水分解するとシアヌール酸が出来るのである。メラニン樹脂を使った食器からのメラニンの溶出でシアヌール酸などが出ているらしい。また工場廃液からメラニンを除去する方法でシアヌール酸を添加すると、不溶性のメラニン化合物が沈殿すると言う。この反応が腎臓で起きたのかもしれない。
巷には、いろんな化学物質があふれている。それぞれ単独では、一日摂取量は幾らまでは安全だとか言われていても複合汚染で相乗的に毒性が増すとなると恐くなる。我々は複合汚染の実験に使われているようなものである。

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