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シンシア動物病院(倉敷)ニュースレター44:ピモベンダン。犬の心不全に特効薬?

      2019/07/25

一般開業医が出来る心臓外科手術といえば動脈管開存症(肺動脈と大動脈が胎児期は短絡しており、成長とともに閉塞するのがそのまま開いたままになっている。)ぐらいなもので、ほとんどが内科療法で治療することしか出来ない。
心不全の治療は、車で例えると、エンジン(心臓)にガタが来た車を、なんとか無理をさせないようにして、少しでも長持ちさせようとするのに似ている。
トルクが上がらないからといって、アクセルを踏んで回転数を上げて走るとエンジンの寿命は短くなる。エンジンへの負荷を減らすため、要らない荷物は降ろす(減量)、回転部のオイル交換による摩擦抵抗を減らす(血管拡張剤などによる血管抵抗の減少)など、要するに、エンジンの解体修理をしないで効率の良い使い方をして、長持ちするように使用すると言うことである。
犬で多い心疾患は、僧房弁閉鎖不全症による慢性心不全である。末期になると薬も、強心剤、ACE阻害剤、利尿剤と飲む方も飲ます方も量も数も増えて大変になり、その内効き目も悪くなり後は死を待つのみとなる。そんな時、治療をする側として、何もできないと言うことは非常に辛い。そんななか、新しい薬でピモベンダンのことが心不全の特効薬として紹介されていた。(JAAHA42,2006)
この薬、ホスホジエステラーゼⅢ阻害薬であるが、同阻害薬の作用である細胞内Ca濃度を高め筋収縮力を高めたり、心筋の酸素消費量を増やすことなく、安全に陽性変力作用を示すらしい。つまり、無理に心臓の収縮力を高め酸素消費を増やして頑張らさせても、心臓はバテテ長生きできないが、この薬は、心筋のCa感受性を高め、酸素消費を増やさないで収縮力が増すことで、心臓は元気に長持ちすると言うことである。
実際、当院でも僧房弁閉鎖不全症で末期の犬に使用したところ、それまで何度か肺水腫を伴い虚脱状態で担ぎ込まれており長くても一ヶ月もつかなと思ってたのであるが、一年間頑張れた。
ただ、この薬ちょっと高いのが難点。この薬の紹介で、原文では A Silver Bullet(銀の弾;特効薬)と紹介している。高いはずである。

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