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シンシア動物病院(倉敷)ニュースレター59:猫の甲状腺機能亢進症、PBDEsが原因か?

      2019/07/22

Environmental Science & Technologyのオンラインニュース(Aug.15 2007)によると、ポリ臭化ジフェニールエーテル類(PBDEs)が、猫の甲状腺機能亢進症の原因である可能性が高いと示唆している。
以前から、室内飼いで缶フードを食べてる猫にこの病気の発生率が高いと言われていたが、その原因は不明であった。
このPBDEs、カーペットやプラスチック製品の難燃剤として1970年代後半から広く使われるようになってきた。発がん性は無いのだけれど、肝臓と神経に毒性、ホルモン撹乱作用があるらしい。この病気の猫のPBDEsの血中濃度は、若い健康な猫に比べて、3倍高い。また魚の缶フードはドライフードに比べて、12倍も高い。35年前までは、この病気、ごく稀な病気であったのだが、PBDEsの生産時期と一致してこの頃より猫の甲状腺機能亢進症が増え、今ではよく観られる病気となった。
この汚染、世界中に広がっている。EUでは既に規制の対象になっており、日本の一部電機メーカーでは自主規制をしている。
猫の汚染濃度は、人の20-100倍と高い。
これは猫が床のカーペットに寝転がり毛に付いた埃をグルーミングして口に入れるからであろう。
人の4歳までの赤ちゃんも大人と比較すると高い汚染度であった。これも床の上を這い這いするからであろう。
日本では、生活様式の違いからアメリカほど、この病気の発生率は高くないように思えるが、海洋汚染は世界的に広がっており、わが国でも瀬戸内海の魚を調べていたが、全ての魚が汚染していた。魚は健康に良いと言われても、これじゃあんまり食べれない。
この物質と病気との直接的な証明は出来ていないが、疫学的にはかなりあやしい。
ダイオキシンと同じように、蓄積性があり低濃度で慢性的に摂取してホルモン撹乱作用がある。
甲状腺ホルモンは脳の発達に影響する。子供達のためにも出来るだけ化学物質は使わないようにしたいものである。それは、全てわが身に降りかかってくる。

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