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シンシア動物病院(倉敷)ニュースレター33:牛の肉を食べてハゲワシが死亡(インド)

      2019/08/01

一昨年、インドでハゲワシAsian Vultureの数が減ってきてその原因を調べたところ、鎮痛薬でジクロフェナクDiclofenac(非ステロイド抗炎症薬:ボルタレン)という薬で治療されてた牛の肉を食べて死んだことが解った。そのためインドでは獣医師にこの薬の使用を禁止した。
インドでは、人は牛の肉は食べないと言う。そのため、死んだ牛はそこらに放置し、ハゲワシや野犬が食べるのであろうか。日本ではこのような事故は考えられない。唯一あるとしたら、動物園であろう。人用に廻せない肉が廻った場合であろう。もし鎮痛薬を飲んでいた牛や馬の肉が動物園の猛禽類に与えられたら大変である。
一般に、鳥は非ステロイド抗炎症薬に対して感受性が高く、腎不全を起こし、痛風になります。
ですから、もし鎮痛薬をテーブルの上などに置いてて、部屋に放した鳥がつついて食べたりすると大変である。こんなことはめったに起こらないと思うが、起こるのが事故である。
今回の事件で、代わりに使用できる鎮痛薬を調べたところ、メロキシカムMeloxicamという薬が安全に使用できることが解った。
しかし、この薬は副作用の少ない新しい非ステロイド抗炎症薬でいい薬であるが、高価である。金銭面でインドの牛に使用出来るか疑問である。
食物連鎖の頂点にいる猛禽類は、人の作り出した色々な化学物質の最終集積動物になって絶滅の危機に晒されている。現在、化学物質は急性、慢性毒性試験、発がん性、変異原性試験などを調べて世の中に出ている。しかしいくら安全だと言われても、思わぬ形で影響が出てくる。フロン問題、環境ホルモン問題、ディーゼル排気ガスと揮発性有機溶剤が紫外線によりオキシダントになるなど、現状の検査だけでは予想できないことがいくらでも起こる。
この意味から、自然保護が野生動物だけでなく、我々自身の保護でもあると言える。

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