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シンシア動物病院(倉敷)ニュースレター55:犬悪性黒色細胞種(Malignant melanoma)に対する治療用ワクチン出来る

      2019/07/22

この度、アメリカ農務省は条件付で犬のメラノーマに対する治療用ワクチンを認可した。
このワクチン、細菌のDNAプラスミドに、メラニン色素を合成するときに必要な、Tyrosinaseと言う酵素を作る遺伝子を組み込んだものである。つまりDNAワクチンということである。
このワクチンを、筋肉内に注入すると、そこでTyrosinaseが合成される。次にそれに対する免疫反応が起こり、Tyrosinaseを持っているメラノーマが攻撃されると言うわけである。
この悪性メラノーマという腫瘍は、主に口腔に出来やすい。その病気の進行程度は、以下の4つの段階に分けられる。
Stage1:2cm以下で、リンパ節に転移が無い。
Stage2:2-4cmで、リンパ節に転移が無い。
Stage3:4cm以上で、リンパ節に転移がある。
Stage4:遠隔組織に転移がある。
この治療は、Stage1は、摘出手術のみ。Stage2以上は、手術と放射線療法が一般的であるが、放射線療法は、日本では難しい。
Stage1の生存期間中央値は511日、Stage2では150日、Stage3-4では60-90日となっている。
このワクチンをStage2以上の犬に投与したところ、生存期間中央値389日となり、かなりの延命効果が認められたと言う。
このワクチン、条件付なので皮膚科専門医だけが扱えるそうで、更なる安全性と効果の確認が求められている。
このワクチンが一般に認可されて、人用のワクチンの開発へと繋がることを期待したい。

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