シンシア動物病院

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シンシア動物病院(倉敷)ニュースレター12:なかなか普及しない3年毎のワクチン

      2019/08/01

先日、インターネットで犬のワクチンについて検索していたら、これはかなり調べられたな、と関心したホームページを見つけた。リンクフリーと書いてあったのだが、設定の仕方が分からないので、興味のある方は、犬のワクチンで検索して、「結局ワクチンって何年に一度接種すればいいの?」と言う題を探してください。飼い主の素直な疑問から情報を収集され、それもかなり正確な情報を集められている。なかなかのものと感心した。しかし、がっかりしたことは、この飼い主さんが、近隣動物病院10件ほどにメールで問い合わせたことの病院側の回答が、あまりにもおそまつであったことである。同じ獣医師として恥ずかしくなった。
そもそも、ワクチネーションプログラム(何年に一回接種するか)が見直しされたきっかけは、アメリカにおいて、1988年に猫白血病ワクチン接種が原因と思われる繊維肉腫が発生したことにある。どんなワクチンでも副作用はある。アナフィラキシー・ショックをはじめ、蕁麻疹、関節炎、免疫介在性溶血性貧血などがある。副作用の問題から、毎年必要かという疑問が湧きアメリカの大学で調べられた。1998年にはアメリカ猫臨床協会、猫内科学会で猫ワクチンのガイドラインが作られ、順次、犬ワクチンについてもアメリカ獣医学協会、アメリカ動物病院協会で作られた。私は1998年ハワイでの学会でこのことを知り、以後3年毎のワクチンにしている。実際、変更するにあたって、かなり悩みました。単純にワクチンからの収入が3分の1に減るのだから。回りの様子を見てからでもいいのではとか、メーカーは毎年接種を推奨しているのだから、アメリカと日本は違うんだと決め込んで打とうとか考えた。しかしほとんどのワクチンは輸入された同じワクチンであり、日本製のワクチンだけが1年しか効果がないとは信じられない。一年で認可を受けているということは、最低一年は大丈夫ということであり、それ以上はデーターを取っていないのでわからないということである。つまりメーカーとしては、戦略として一年毎で認可を取ることのほうが、三年毎でとるよりよいに決まっている。獣医師のほうも、メーカーが推奨しているといって、責任をメーカーに転嫁して、三年毎のワクチン接種行わないでいる。獣医師の責任は何処にあるのであろう。事実を知っても、しかとを決める。また、色々こじつけて変えようとしない。われわれ獣医師は科学者である。根拠に基づいた治療を行はなければならないのである。
わたしも、近隣の動物病院(岡山県下36病院)について調べてみたところ、3年毎で行っている所は、当院以外では1件しかなく予想をはるかに下回っていてがっかりした。毎年する理由としては、メーカーが推奨しているからとか、日本とアメリカでは基準が違うとか、3年も効果がないとかである。
予想どうりと言うべきか。ハワイでの学会で言っていた講師の言葉を思い出す。「これは、獣医師の良心です。」

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