シンシア動物病院

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シンシア動物病院(倉敷)ニュースレター28:骨折治療における創外固定法の利点

      2019/08/01

先日、創外固定法による骨折手術の講習会に行ってきた。講師は大阪の開業獣医師である岸上氏である。氏は開業の傍ら大学で再生医療の研究をされている。そこで生体の持つ複雑な再生メカニズムを知れば知るほど、従来の骨折手術法である金属プレート固定やピントワイヤーによる固定手術が、いかに生体の再生メカニズムを破壊し生体の再生力を阻害ているかを、またプレート固定により逆に骨が弱くなっていくかを、実感したと言う。
再生力阻害しないポイントは、骨折端を整復するために、できる限り骨折部分を弄くらないという事である。どうしても切開が必要な場合は、できるだけ最小限の切開創にして、そこに出来ている血餅を取り除かないようにすることである。そして患部をしっかり固定できる方法でするということである。血餅に中には、修復に必要な成分(サイトカイン)がたくさん含まれており、それを取り除くと言うことは治癒を阻害することになる。また、手術創を大きくして手術すると、サイトカインは空気や光に触れて失活し、さらに骨に行く血管が壊されることにもなり治りを遅くすることになる。
そこで、再生力を残して行う手術方法となると、創外固定法が良いというわけである。
この創外固定法、骨折した骨を皮膚の外から金具で固定すると言う方法である。ですから、活発な子にこの手術を行うと、非常に気を使うわけである。
咬んでしまわないだろうか、あちこちぶっつけたりしないだろうか、紐が絡んだりしないだろうかと、治るまでひやひやするのである。私も3例犬の前腕骨骨折でこの方法治療した。一頭目は檻に引っ掛けてしまい、骨折端が少しずれたが、ギブス固定を併用し何とか曲がりなりでも治り、ほっとした。2頭目は問題なく完治。3頭目は現在治療中。何とか骨が盛ってきているのでうまく行くのではと期待している。でも油断は禁物。
岸上氏の話を聞いて、骨折手術が全て創外固定で出来るという訳ではないが、出来る限り創外固定でやっていこうと意を強くした。

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