シンシア動物病院

倉敷の動物病院/ペットクリニック/犬/猫/爬虫類

シンシア動物病院(倉敷)ニュースレター46:自己免疫疾患におけるIgGの作用をIgGで抑えて治すこの不思議。

      2019/07/25

自己組織を異物として攻撃してしまう自己免疫疾患(免疫介在性溶血性貧血、紅班性狼そう,リューマチetc.)において、自己の抗体に対して作られた免疫グロブリンIgGが病気の発症に大きくかかわっている。つまり、自己抗体が引っ付いたIgGを、免疫担当細胞が認識しそこで一連の炎症反応が起こされるのである。
ですから治療としては、その免疫反応を抑制するステロイド剤やその他の免疫抑制剤を使用して抑える。この治療、ステロイドの大量使用するため副作用が出易く、他剤との併用でそれぞれの薬の量が減らせる様に考え、副作用が出ないで最大の効果を出すことが肝心である。
その他、新しい治療法で免疫グロブリン療法というのがある。私も数年前セミナーで知り、症例があったら使おうと考えているが、まだ使ったことが無いのでどの程度効果があるか分からない。
アトピーにも効果があるらしいが、重症患者でないので使っていない。
ともあれこのIgG、自己免疫疾患発症のキーマンであるのに、これを同じIgGで抑えるなんてどうも理解できない。この疑問にロックフェラー大学のY.Kanekoらが解き明かしてくれていた。
これによると、IgGの構造でYの字の下の部分にあるFcフラグメントに付いてる糖タンパク質(シアル酸)がその違いの原因であるらしい。実験では、このシアル酸のついたIgGと、シアル酸を洗い流したIgGを使って治療した。結果は、シアル酸の付いた方が10倍の抗炎症活性があった。
この記事を読んで、ちょっと納得。
今後、研究が進んで、IgGを使わないでも同じ作用をする薬が出来ることを期待したい。

 - 院長ブログ