シンシア動物病院

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シンシア動物病院(倉敷)ニュースレター7:犬の妊娠中絶

      2019/08/01

避妊手術をしようと思ってた矢先、交配してしまった。
手術はかわいそうだからと、しないでいたら、よそからオス犬がやってきて交配してしまった。こんな時どうするか。もう一匹ぐらいなら何とか飼えるが、それ以上だったらどうしよう。望まれない妊娠は困りものである。
こんな時、動物病院ではどうするか。交配直後であればエストロジェン注射、妊娠中期ではプロスタグランジン製剤注射で、着床阻害や流産を起こしたりしていました。しかし、エストロジェンでは貧血がおき、プロスタグランジン製剤では過呼吸が起こり、流産も100%起こるとは限らないので、今ではあまり行っていない。後は手術で胎児ごと卵巣子宮を取ると言う方法である。また新しい方法で、
まだ日本では発売されていないのだが、aglepristone(RU543;製品名Alizine)と言う抗プロゲスチン注射薬を妊娠中期までに二回注射すると言う方法がある。文献では、妊娠25日までだと100%、45日までだと95%の成功率で中絶したとある。しかもこれと言う副作用もなくである。またいい副作用として、この薬は子宮蓄膿症の治療薬としても使えるようである。この薬が使用できるようになれば、避妊手術が減るかもしれない。生理で汚れるのがいやだと言う人は手術するであろうが、可哀相だと言う人には朗報であるからである。私自身、可哀相だと思うからである。
この薬は、欧米で使われている人の経口中絶薬(RU486:mifepristone)の類似薬で動物用に作られた注射薬である。人用の薬も副作用も少なく中絶手術をするより安全であるらしい。それなのに、日本では認可がまだされていないという。何でだろう、欧米でなかなか広まらなかった訳は、宗教上の問題からで、日本は中絶が安易になるからだとか。しかし危険な手術よりも、安全な薬を望むと思うのだが。
人のほうでも、海外で広く使われている薬が、日本では使えないと言う問題がある。動物のほうでも,然りである。最近欧米と日本とで、薬の承認に関して簡素化しようと話し合いがもたれており、徐々に良くなっているが、ある一定の基準を満たして承認された薬は、世界どこでも使用できるようになってもらいたいものである。メーカーは、市場が小さいと判断したら、経費をかけてまで、承認を取ろうとはしない。もし承認を取っても高い薬となって、国民の負担が増すと言うことになる。

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